クライミングジムでは、課題を完登したときに、「一撃した!」とか「オンサイトすごい!」などの言葉を耳にすることがあります。
今回はこれらの言葉の意味についてご紹介したいと思います。
クライミングは「完登」にも優劣が存在する
まず「完登」とは、スタートからゴールまで、落下せずに登り切ることを指します。
クライミング、ボルダリングは、もちろん完登を目指すというのは共通の目的です。
ですが実は、完登するまでに要したトライ回数によって、完登にも優劣が存在します。
簡単に言えば、トライ回数が少ないほど「すごい」ということになります。
コンペ(大会)などでも、選手が同じ完登数で並んだ場合、よりトライ回数が少ない選手の方が上位になります。
一番すごいのは「オンサイト」
そしてトライ回数が特に少ないものに関しては、「称号」のようなものがつきます。
クライミングで一番すごいとされているのは、「オンサイト」です。
オンサイトの条件は以下の通りです。
●1回目のトライで完登する
●課題に関して何の情報も得ていない
※他人の登りを見ていない、登るときに初めて見た課題
この条件を満たした場合、その課題は「オンサイトした」ことになります。
このように、オンサイトをするチャンスは最初の1回目のトライしかありません。
登る力、集中力、課題を読み解く力、ムーブを考え出す力、これら全てがかみ合わないとオンサイトできません。
よって最も価値がある完登とされています。
厳密に言えば、課題の難易度を示す「グレード」を登る前に知っている場合や、ブラッシングを行い引っかかり具合を感じ取ってしまうと、オンサイトにならないという考え方もあります。
しかし、特にクライミングジムにおいては、課題のグレードを示すテープが貼られているため、グレードを知らずに登るというのは難しいです。
当ジムのそうですが、多くの場合はグレードを知っていても、またブラッシングをしていても、誰の登りも見ていない状態で1回目のトライで完登すればオンサイトと呼んでいます。
二番目にすごいのは「フラッシュ」
フラッシュも1回目のトライで完登することを言います。
オンサイトとの違いは、「課題の情報を得ている」という点です。
情報を得ているとは、主に「他人の登りを見ている」ことを指します。
その他に、事前に難しい箇所や、ホールドの持ち感など何かしらのアドバイスをもらっている場合もオンサイトにはならず、フラッシュとなります。
「一撃」はオンサイト、フラッシュを区別しない俗語
おそらく「一撃」は最も耳にする機会が多いと思いますが、これは1回目のトライで完登した場合に、上記のオンサイトとフラッシュを区別せずに使っています。
オンサイトの項で書いたように、厳密なオンサイトは解釈が異なる場合もあるので、クライマーが最初のトライで完登した場合、単に一撃と呼ぶことが多いです。
「レッドポイント」について
レッドポイントとは、2回目以降のトライで完登することを言います。
完登するまでの過程は問われません。
何回トライしても、難しい箇所だけ練習しても、ムーブのアドバイスをもらっても完登すればレッドポイントとなります。
自分の限界グレード付近をトライする場合、一撃で完登するのは容易ではなく、クライマーの完登はほとんどがこのレッドポイントにあたります。
一撃も視野に入れてトライをしてみましょう
クライミングのスタイルは人それぞれ自由です。
一撃にこだわる人もいれば、こだわらない人もいます。
ですが一撃のチャンスはその課題において、人生で一回しかありません。
どうせトライするなら、一撃することも視野に入れてトライしてみるのも面白いと思います。
一撃できてもできなくても、必ずメリットがあります。
一撃を意識することによって、オブザベーション能力も上がります。
オブザベーションとは「観察」という意味で、課題を見て登り方を考えることを言います。
特にコンペなどのクライミングの大会においては、このオブザベーションの能力が非常に重要になります。
そしてこのオブザベーションの精度は、経験を重ねれば必ず上がっていきます。
オブザベーションはクライミングの能力に直結するので、ぜひ一撃を視野に入れたトライをしてみましょう!